世間はそろそろ連休に入ろうかという4月末のある日、北海道は小樽まで日帰りで出かけてきた。特になにか目的があったわけではない。期限間近なJALの株主優待券が余っていることに気がつき、JGC修行をしていた頃のように、ほとんど飛行機に乗ることだけを目的とした旅をたまにはしてみたくなった。
思いつきの旅にしても一泊くらいすれば「旅行」らしく仕立てることも出来るのだが、無理にそんな「タイパもコスパも良い充実した旅」のフリをしなくても、ただ移動することだけが目的の「無駄で無意味な旅」もたまには良いだろう。どうせ暇つぶしであるならば、今日はちょっと渋谷をブラブラしてみるか、くらいのノリで遠出をしてみよう。
久々にそんな気分が盛り上がってきたので、行き先は北か南か西か迷ったのだが、久しぶりの北海道も良かろうということで、新千歳空港行きのチケットを株主優待で買ってみた。リセール市場がすでに崩壊した株主優待券はこういう場合に威力を発揮する。かと言って半年先のLCCの航空券のように激安で買えるわけではない。そもそもFSCだし。
ということで、適当に買ったJALの札幌行きのA350は、大谷翔平スペマ仕様”DREAM SHO JET”のJA08XJだった。機内で提供される飲み物の紙コップも特別仕様だった。
決めていたのは行き帰りの飛行機だけで、実際のところ新千歳空港内で温泉にでも入って、ラーメンかジンギスカンでも食べてずっと過ごすというプランもあったのだが、とりあえず札幌に出てみようということでエアポート快速に乗った。するとその列車は札幌行きではなく小樽まで行くというではないか。時間的にも札幌から小樽までは40分ちょっと。ならばこのまま終点まで行ってしまおう!ということで石狩湾の海岸線を眺めながら小樽を目指す。
数年前にこの辺の海岸まで308SWでやってきたことがあったなぁ……と思い出す。車で移動するとあんなに遠かった石狩湾が、実はこんなに近いなんてとても複雑な気持ちになる。小樽駅
ということで小樽駅に到着した。そういう演出なのだろうとは思うが、そこかしこにレトロ風味の設備が残されており、鉄道旅の旅情が残る。同じ列車でやってきた他の客がみんな出ていくのを待って、しばらくホームをウロウロしてしまった。
倶知安行きのローカル列車。観光客なのかわりとお客さんが乗っていた。そうか、こういうルートで鉄道でニセコの方に行けるのか。今年はもうゲレンデは閉まっているだろうか?スキーをしていた頃が懐かしい。
時々ニュースに流れてくるニセコのインバウンドバブルはすごい話ばかりだが、まだ自分たちの手に届く範囲にあったニセコが懐かしい。そしてやはり北海道は冬に来るべきじゃないかと思う。また来シーズン、雪を見ることだけを目的に来るのもアリかもしれない……などと妄想する。
三角市場で海鮮丼を食べる
駅前にある三角市場への入り口。小さな階段を登った先にある裏路地感がとても良い。
思いつきの弾丸旅といえども、一応目的らしきものというか、折り返しポイントを設定することにした。行き先を小樽にしたついでに、今回はその最終目的地を北海道らしくベタなところで「海鮮丼を食べること」に設定した。どうやら小樽駅前には三角市場という観光目的の海産物市場があるらしい。そこで何か美味しいものを食べようではないか。そしてなにか海産物を買って帰ろう。
中は通路が一本だけあって非常に狭い。ここはローカルな知る人ぞ知るな市場……ではない。観光のハイシーズンとかどうなってしまうのだろうか?
今のご時世、お客さんの半分以上は海外からの人たちだ。そういう自分も観光客なので心配する筋合いではないのだが、札幌や釧路や函館や苫小牧やその他、北海道各地にある有名な海産物市場と比べてもかなり小さい。でもその狭さがちょっといい感じだ。
いずれにしろこの日はそこそこ空いていた。市場内にある食事処も超人気店を除いてだいたい待ち時間なしに入れるようだ。
ということで、適当なお店に入って熟考の末に頼んだのはウニ&鮭といくらの親子丼だ。産地とかはこの際気にしない。思ったよりちゃんとしたやつが来た。実際とても美味しかったしボリュームも十分だ。なおこれでお値段¥3,500だったはず。
今はアルコールを控えているところなのでノンアルコール。小樽ビールのノンアルコール、しかも黒があったのでそれを注文してみた。黒ビールのノンアルは珍しい。
でまぁ、体調のせいか食事との組み合わせのせいかよく分からないが、妙な甘みが強く感じられて今ひとつ、というのが正直な感想だ。でもそれもこれも含めて旅先の地物を味わう楽しみなので、とても満足だ。
さて、これで今回の思いつきの旅の目的は果たされた。あとは帰りの飛行機までの時間つぶしに小樽の街角を散策してみよう。
駅前から運河方面へ散歩する
特に目的地はないので、駅を出て海の方に向けて歩き出す。小樽の街角にはちらほらと桜が咲いていた。東京では2週間くらい前に散ってしまった桜だが、北海道ではようやく咲き始めたところのようだ。
旧安田銀行小樽支店。全く引きがないところで入り口の扉だけ切り取ってしまう。
小樽の町並みというと、こういう感じの明治から昭和初期にかけて建てられた歴史的建造物がある。有名な運河周辺に立つ倉庫群もそうだったっけ? ならばなるべくそれらを見て回ろう。
石造りの建物だけでなく古そうな木造の建物も残っている。これは…… 小樽市の歴史的建造物に指定されている旧早川支店の一部なのだろうか? 旅館なのか料理屋なのかそんな感じの大きな木造二階家だったが、看板もなく素性はよく分からない。でも格好いい。
かの有名な小樽運河
そうこうしているうちに小樽運河に突き当たった。あまりにも有名な小樽を代表する景観だ。
以前、ニセコからの帰りがけに真冬に訪れたことがある。雪のある景色はとても美しかった。季候が良くて過ごしやすい春も悪くない。運河沿いを行きつ戻りつしながらゆっくり歩いて端から端まで行っても30分もかからない。それなりに観光客はいたがかなり空いている方と言えそうだ。風が強かったせいか遊覧船は運航されていなかった。
有名な写真スポットの広場ではウミネコが人に紛れてうろついている。餌をもらう癖がついてしまっているのかもしれない。
なんだか長閑でとても良い雰囲気だ。さて、運河周辺の倉庫街も見て回ったので、そろそろ駅の方に戻っていこう。
運河から駅方面へ散歩する
日銀通りを登っていく。通りの名にもなっているように途中には日本銀行の旧小樽支店の建物がある。これは明治末期の建築物だそうだ。小樽は日銀が支店をおくほどの街だったことが分かる。
この通り沿いにはその他にも拓銀や第一銀行や三井物産などの歴史的建造物が並んでいる。
日銀横の白木蓮。もうほとんど咲きかけという状態だった。
JR函館線と小樽運河の中間あたりに手宮線の廃線跡が遊歩道になって残されている。廃止されたのは1985年とわりと昔だが、道路化されたりすることもなくかなりの距離がそのまま残されている。
都通りというアーケード商店街を歩いてみる。なんとなく関西風の商店街だ。最近の地方都市の商店街らしく閑散とした感じで連休に入った週末の昼間というのにシャッターが閉まっているお店が多かった。
それはそれでスナップ写真映えはするのだけど、インバウンドが期待できる有名観光地ならもう少し何とかなるのではないという気もする。
雪国らしく道路脇には滑り止め材を入れておく箱が設置されている。小樽は微妙に傾斜があるので、ツルツルになると運転はかなり難儀しそうだ。いや、もしかしてこれは歩行者用なのだろうか?
いずれにしても「ゴミ箱ではありません」は分かるのだが「食べられません」はちょっと意外だ。食べちゃう人がいるの!?
小樽駅ふたたび
小樽駅にふたたび戻ってきた。帰りはえきねっとアプリでUシート(指定席)をとったので、新千歳空港まで約1時間半、ゆったり車窓を眺めながら帰ろう。
小樽駅にはランプ風の照明がやたらと並んでいる。地元産の有名なガラス工芸製品と関わりがありそうだ。実際のところなかなか洒落ていて格好良い。
小樽駅ホームの端には石原裕次郎氏の大きな写真がある。この駅看板下は、その写真と同じアングルで写真を撮るためのフォトスポットになっているらしく、到着時は熱心に自撮りをするカップルがいて、なかなか場所を明け渡してくれなかったので諦めた。帰りは誰もいなかったのでゆっくりと撮らせてもらった。え?もちろん自撮りも撮った(なお非公開)
いつの間にかJR北海道を席巻しているH100形。ディーゼルハイブリッド車両らしい。
北海道の鉄道は廃線や廃駅がどんどん進み、将来が危ぶまれている。そういう自分も北海道旅行というと空路&自動車ばかり使うわけで、今回JR北海道を利用したのは本当に久しぶりだ。
今回は行きがかり上そうなったわけだが、飛行機だけでなく鉄道にも乗る旅ができて良かったと思う。海鮮丼と見知らぬ街の散歩とスナップ撮影はほんのおまけということにしておこう。
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