7月16日19:00にリコーイメージングがPENTAXブランドに関する今後のビジョンを発表した。「PENTAX STATEMENT」と名付けられた特設WEBページが用意され、そこに動画が二つ貼られている。
一つは特設サイトの内容を動画化した“イメージビデオ”だ。
雄大な自然の中でPENTAXの一眼レフを持ったフォトグラファーが、気持ちよさそうに写真を撮っているシーンをベースに、テキストと英語ナレーションで構成されている。なるほど、これが「PENTAXのロマンを表したビデオ」と事前に噂されていたやつか。
最初にこっちを開いてしまい「なんだよ本当にこれだけかよ!」と思ってしまった。が、よく見ると動画はもう一つあった。
どこか見覚えのある場所(リコーイメージングスクエア新宿の奥の部屋に違いない)で撮影された、高橋社長と写真家の佐々木啓太さんによる対談形式の動画だ。むむ、こっちの方が気になるぞ…。
冒頭で5つのステートメントについて高橋社長の口から解説されている。その一つ一つについて分析したり、批評したりはしないが、全体的にとても優等生的でロマンチックで、良く出来たステートメントだ。
特に「…カメラを造る」という言葉が力強く頼もしい。
ミラーレスはやらない宣言
この動画の中で個人的に「これがハイライトだな」と思ったのは以下の部分だ(23分40秒〜)
佐々木氏:
「…とはいえ、今巷では、フルサイズミラーレスというのが非常に話題になっておりますが、今後ペンタックスさんでも新しいマウントでフルサイズミラーレスに参入されるという計画なんてのはあるんですかね?」
高橋社長:
「先ほど申し上げたように、ミラーレスが良いとか一眼レフが良いとかということではないのですが、ペンタックスとしては、写真のプロセスが楽しめる一眼レフを突き詰めていきたいという風に考えています」
やや遠回しな表現ではあるが、これは「ペンタックスはミラーレスはやらない。一眼レフだけで行く」という明確な宣言だと受け取った。この決断が5つのステートメントの土台であり結果でもあるのだろう。それでも、高橋社長の口調にややためらいが感じられたのは気のせいだろうか?
今回のPENTAXの決意表明は、意地悪い見方をすれば「敗北主義的」とも言えるかも知れない。「やらない」ではなく「できない」んだよね?と。他の分野でも一時代を築いた老舗が陥りやすい罠という気もしなくもない。
でも、一方でやはり現実的でもあるのだ。
一眼レフは生き残れるか?
気がつけばコンシューマ向けに一眼レフを作っているメーカーはニコンとキヤノンとペンタックスだけになってしまった。前2社は明らかにミラーレスへのシフトを進めている。つい先日のEOS R5/R6の発表に、キヤノンがミラーレスにかける本気を見て、むしろペンタックスはホッとしたのかもしれない。
一眼レフが誕生して以降もレンジファインダーが細々と生き残ってきたように、一眼レフもこの先きっと生き残る。カメラ市場がスマホにさらに押されて、レンズ交換式のカメラが趣味用により特化していくなら、敢えて一眼レフを選ぶ人も一定数残るだろう。そしてそれらの人々はこだわりが強く金払いが良い。その小さな市場は規模的にニコンやキヤノンのカメラ事業を支えることは出来なくても、ペンタックスの規模なら支えることが出来るかもしれない。
…ということなのだろうか? そうかも知れないし、そうは上手くいかないかも知れない。でも将来のことなんて誰にも分からないではないか。敢えて偉そうに上から言うならば「やってみる価値はある」だろうと思う。
もし見込みが外れ、失敗してしまうなら仕方がない。そうなっても「オレ達は頑張った!やれるだけのことはやった!」と、一人のペンタキシアンとしては清々しい気持ちで諦めがつく。そして素知らぬ顔で他社のミラーレスへ移っていけば良いのだ。
新APS-Cフラッグシップとファインダー問題
さて、そんな先のことはさておき、目先の問題で気になるのは間もなく登場するはずの新APS-Cフラッグシップのことだ。
上に貼った対談動画の残り時間がわずかとなり「おいおい、まさかこれで終わるのかよ!」とツッコミを入れたくなった絶妙なところで、佐々木さんと川内さんによる小芝居が始まる。
新製品については来週改めて何かが発表されるようだ。
今度の新APS-Cは「一眼レフ専業で行く」という決意をベースに、ファインダー倍率が高められ、OVFにこだわっていることがすでに発表されている。
一眼レフファインダーをウリに今後やっていくというのなら、やっぱりK-1/K-1 IIの後継機、つまり新しいフルサイズのフラッグシップが絶対必要だ。それこそ最高の一眼レフファインダーを搭載していなくてはならない。個人的に一番欲しい新製品はそれに尽きる。
だから、今回のステートメントと決意は、new K-1の開発宣言でもあると確信している。