HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR は買いなのか?

2020-02-09

 先月末、リコーイメージングからKマウントの新レンズ、HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR が発表された。以前からロードマップに載っていたもので、旧レンズのHD化ではない純粋な新レンズとしてはDFA★50mmF1.4以来約1年半ぶりとなる。

 K-1改をメインカメラとしているペンタキシアンとしてはとても気になる。さて、このレンズは買いなのだろうか? 買わなくてはいけないのだろうか? あるいは買う必要は無いのだろうか?

 製品の詳細については↓このページに書いてあるので、まずはじっくり読んでみた。著名な写真家さんによる作例も豊富だ。

 ちなみに、メーカはもちろん公言しないが、このレンズはタムロンのA034と中身はほとんど同等と思われる。

 レンズ構成から細かいスペック、外観などなどほぼ一致している。だからどうってことはない。ペンタックスではおなじみの話だ。

 ところで、Kマウントにはすでにほぼ同じ焦点域のレンズとして HD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AW がある。F2.8という開放F値に防塵防滴のAW仕様、特殊ガラスと最新のコーティングを施した本気の光学設計などなど、スターレンズにふさわしい1本だ。

 このレンズはすでに持っていて、つい最近も↓以下のようなエントリーを書いたところだ。

 うん、HD PENTAX-D FA★70-200mmF2.8ED DC AW は素晴らしいレンズだ。ということは、DFA★70−200mmF2.8を持っていればDFA70-210mmF4は普通に考えると要らないはずだ。昔から「大は小を兼ねる」と言うではないか。

 だがしかし、上に貼った公式WEBサイトの HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR 製品特徴ページには聞き捨てならないことがことが書いてある。以下にスクリーンショットにて引用させてもらう。

70−200F2.8と70−210F4の最大撮影倍率

 まずはここだ。最大撮影倍率の違いについて解説されている。最短撮影距離と最大撮影倍率が違う理由について説明されている。

 最大撮影倍率は、DFA★70−200F2.8の大きな欠点の一つである一方で、DFA70-210mmF4の大きな特徴の一つである。実際のところ近距離を撮る場面においてこの差はかなり大きいはずだ。

 そしてもう一点…

DFA★70-200mmF2.8とDFA70-210mmF4の重量差

 これだ。重量差はレンズのみで半分以下、ボディ(K-1 Mark II)込みで40%ほど軽くなる。

 最大撮影倍率と同様に重量は、DFA★70−200F2.8の大きな欠点の一つであり、DFA70-210mmF4最大の特徴である。この差は非常に大きい。

 ということで、スペックの差は分かったが、手にした実感を確かめるため実物を触ってみることにした。
 

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR を取り付けたK-1 
 発表済みで発売前の新製品は新宿のリコーイメージングスクエアに行けば大体おいてある。もちろんDFA70-210mmF4もこうして実動作状態で展示されていた。大人気で人だかりができて押し合いへし合い… なんてこともない。

 見ての通り、K-1に取り付けるととてもスリムだ。そしてスペックどおりとても軽い。持ち上げると拍子抜けしつつ、ボディ側の重みにビックリするくらいだ。
 

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR ズームリング 
 ズームリングが前玉側にあるがそんなに幅広ではない。そしてトルクは軽くて変動もない。なお、インナーズームなので全長の変動はない。

 さらに小さな距離指標窓を挟んですぐにピントリングがある。なるべく前の方に寄せようという意図だとしたらよく出来ていると思う。望遠レンズはぶれ防止のためになるべく前玉側で支えることになるわけで、マウント近くにピントリング(またはズームリング)があると、持ち替えなどが発生してとても使いにくいのだ。

 と言っても、このレンズはそもそも軽量なのであまりその辺は気にならないかも知れない。
 

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR スイッチ類 
 AF/MF切替スイッチとフォーカスリミットのスイッチが付いている。このスイッチの形状が露骨にタムロンっぽくてなかなか味わい深いが、それは些細なことだ。

 スイッチとDFAロゴの間に思わせぶりな帯があるが、リコーイメージングとしては三脚座は用意していない(タムロンにはあるが使えるかどうかは不明)。望遠レンズで三脚を使うとかんがえるとレンズ側の三脚座は必須と思いがちだが、このレンズの場合はボディ側固定で十分だということらしい。

 何しろこのレンズ、DFA★50mmF1.4やDFA15-30mmF2.8よりも軽く、DFA24-70mmF2.8あたりとほぼ同じ重量なのだ。長さや画角の狭さを考慮したとしても、ボディ側の三脚ネジで十分に固定できるだろう。むしろそのほうがバランスが良くぶれ防止になるはずだ、とか。
 

PENTAX KPのディスプレイPENTAX K-1改, HD DFA 70-210mmF4ED SDM WR(70mm), f4.0, 1/100sec, ISO400, 0EV
 さて、発売前の製品とは言えすでに量産出荷間近と言うことで、実際に自分のK-1改に取り付けて撮影してみることが出来た。と言っても、リコーイメージングスクエアの中なので適当にシャッター切ってみただけだ。

 ますはワイド端の70mm。絞りは開放だ。当たり前にとても良く写る。ただし、ボケはもしかしたらあまり期待しない方が良いかもしれない。
 

PENTAX KPデモ機PENTAX K-1改, HD DFA 70-210mmF4ED SDM WR(210mm), f5.6, 1/250sec, ISO1600, 0EV
 こっちはテレ端の210mm。撮影位置はほとんど同じ。ただしなぜか一段絞ってしまった。画面隅っこに図らずも生じた玉ボケのラグビーボール形状はこんな感じだ。ほほう… なるほどなるほど。
 

リコーイメージングスクエア東京のギャラリーPENTAX K-1改, HD DFA 70-210mmF4ED SDM WR(210mm), f4.0, 1/200sec, ISO400, 0EV
 テレ端のまま少し距離があるものを撮ってみた。

 なおRAWファイルをLrで現像しているが、まだレンズプロファイルがサポートされていないので、レンズ補正はかけていない(かけようと思えばタムロンA034のプロファイルを使うことは出来るが、正しい処理かどうか保証はない)。歪曲はそれなりに感じられるが、周辺光量はそんなに気にならない。
 

PENTAX K-1の肩PENTAX K-1改, HD DFA 70-210mmF4ED SDM WR(210mm), f4.0, 1/125sec, ISO3200, 0EV
 さらにテレ端のままより近距離のものを撮ってみた。厳密に最短撮影距離ではないが、それに近いところのはずだ。やはりこの近接撮影能力と撮影倍率の高さが魅力的ではないかと思う。
 

HD PENTAX-D FA 70-210mmF4ED SDM WR を取り付けたK-1 
 ということで、ファーストインプレッションとしてはとにかく軽さが印象に残った。このレンズを生かすためにも、是非小三元を揃えて欲しいと思う。標準域は28-105mmでカバーすると言うことなら、是非小型軽量な広角ズームが欲しい。17-35mmF2.8-4あたりを期待したい。

 さて、タイトルの問いに対する答えだが、製品としてはとても良く出来ていて買いだと思う。だが個人的にはひとまず様子見としたいと思う。なにしろDFA★70-200mmF2.8を持っているので、すぐにこの焦点域のレンズを必要としてない、という点が大きい。

 本文にも書いたように小三元セットとして揃うか、あるいは来たるべきAPS-Cフラッグシップ機を手にしてから再度考えたいと思う。
 

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