もうすでに以下のカワセミとFLYING HONUの記事で写真をアップ済みなのだが、このたび新しいレンズ NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sを手に入れた。過去Kマウント時代を含めて、超望遠域の単焦点レンズを手にしたのは初めてだし、600mmという焦点距離も自分史上一番長いレンズとなる。ついでにいうと、お値段も過去一高い。
昨年秋に発表された際にかなり気になっていたものの、お値段を見てすっかりその気をなくしていたはずなのだが、結局その後約半年間悩んでいるうちに買ってしまった。物欲の世界の名言を思い出したから、というのはあながちウソでもない。その名言というのは……
迷う理由が値段なら買え
だ。
閑話休題。詳細を一応見ておこう。まずはニコンの公式製品情報から。
レンズ構成は14群21枚でEDレンズ2枚、SRレンズ1枚とともにPFレンズが1枚使われている。いわゆる位相フレネルレンズと呼ばれるもので、このレンズを使うと大幅な小型化が可能になるらしい。開放F値が6.3なのでそんなもんだろうとは思いつつ、フィルタ径95mmで全長278mmと30cmを切っている。そして重量はなんと三脚座ナシで1.39kgしかない。素晴らしい。
絞り羽根は9枚で最短撮影距離は4m、最大撮影倍率は0.15倍しかない。しかし近接撮影能力に期待するレンズではないのでこの辺はまぁ良いだろう。レンズ内手ぶれ補正入りで単体で5.5段分、Z 8のボディ内手ぶれ補正との協調モードでは6段分の補正能力があると言うことで、大変頼もしい。
外観はこんな感じ。とても格好良い。ヨンニッパやロクヨンのような本気の大口径超望遠のような迫力はないが、わりと細くコンパクトにまとまっていて美しい。
前玉。PFレンズは前から3枚目に使われているらしいが見た目には分からない。フィルタ径は95mmもあるのでフィルタを多用するのは難しい。前玉にはフッ素コートもされているのでそもそもプロテクターも使わない。
なお100-400mmはこの前縁部にゴムが巻いてあったが600mm f/6.3はそのような処理はされていない。ところでゴールドのリングは何を表しているのだっけ?
後玉側。望遠レンズらしく後玉は奥の方に引っ込んでいる。なのでもちろんテレコンも使える。1.4倍をつけると840mm f/9に、2倍をつけると1200mm f/13になる。AFはちゃんと動くのだろうか?
レンズ最前部のゴムローレットはただの滑り止めで回転はしない。Sラインバッジの手前側(マウント側)にある細いリングがカスタマイズ可能なコントロールリング、さらに手前にあるやや太いリングがピントリングだ。またレンズファンクションボタンは、マウント脇にL-Fn1が1つ、Sラインバッジ周辺にL-Fn2が90°おきに4つついている。
今のところこれらのコントロールリングとレンズファンクションボタンをどのように使うかは決めていない。そのうちゆっくり考えてカスタマイズしたいと思う。
マウント脇にはL-Fn1ボタンをAF/MF切替スイッチとフォーカスリミッターのスイッチがある。手ぶれ補正モードのスイッチはZマウントになってなくなってしまった。OFFすることは多分ないが、スポーツモードと標準モードはもう少し自由に切り替えたい気がする。
三脚座は取り外し可能。この台座部分は100-400mmと全く同じもののようだ。
手持ちで使うためのレンズなのであまり三脚に乗せることはないと思うが、持ち運び用のハンドルとして付けておいた方が何かと便利だったりする。ただ、その用途としてはちょっと小さすぎて心許ない。うっかり手を滑らせると即大惨事になりかねないので注意が必要だ。
付属のフードはプラスチック製で、前縁部には滑り止めのゴムが巻かれている。比較的厚手でそこそこしっかりしている。内側の反射防止は溝を切ったりはされておらず、つや消しの塗装のみだ。取り付けはバヨネット式でロックボタンがある。
ちなみにZ100-400mmとZ663を並べてみるとこんな感じだが、この写真は若干遠近感による強調されてるようで、実物を見ているとこれほど大きさの違いは感じない。
それよりも手にした時にZ100-400mmのほうは明確に「重たい」と感じる一方で、Z600mm f/6.3のほうは「軽い」と感じる。実際の重量はこの2本はほとんど同じで35gほど600mmのほうが重たいだけだ。
なおこのレンズの生産国は中国だ。ニコンは自社工場を中国には持っていない。つまり設計はともかくすくなくとも製造はどこかに委託しているのだろう。なおZ100-400mmはMade in Japanとなっている。ん? ニコンの日本国内の工場ってまだあったんだっけ? もしかしてこれも………?
さて、すでに何度か持ち出して写真を撮っているのだが、本当に軽快で使用感の良いレンズだ。AFも十分に速いしピントもシャープ、ボケも良いし色収差もない。とてもクリーンでスッキリした絵が撮れる。
ズームして画角を決めるという作業を諦めた分、ファインダー内の被写体により集中できる気がする。実際カワセミのダイブ写真が初めて撮れたのも、このレンズを手にしたおかげではないかと勝手に思い込んでいる。
でも600mm程度の望遠が欲しいなら他にいくらでも選択肢があって、特にZマウントの場合Z180-600mmm という素晴らしいレンズがあるし、400mm f/4.5に1.4倍テレコンを組み合わせるほうがずっと安くすむ。何なら、すでに100-400mmを持っているのだから1.4倍テレコンだけ買えば、とりあえず560mm f/8という世界は手に入るのだ。
ニコン系で人気のある某Youtuberも「Z663はない」と断言していた。理由は高すぎるから。まさに正論過ぎて誰も反論できないだろう。他のレビュアーもだいたい同じようなことを言っていて、ようするに「性能や操作性は抜群だがあまりにも高すぎる」に尽きるといったところだろう。実際それほど使っている人を見ない。
Zマウントのレンズは他者の同クラスと比べても比較的お安い値付けだったのに、いったいこのZ663はどうしたというのだろうか? 不思議で仕方がない。それを重々承知しているのに買ってしまったことはもっと不思議で仕方がない。どうしても欲しかったのだ。なるべく小さくて軽くて、性能に妥協のない600mmが。
いや性能という面でいえばPFレンズはフレア問題があるから「妥協」はあるじゃないかと野暮なことは言わないように。まぁそれがどの程度の問題なのかまだ実感していないのだが、それについてはおいおい考えていくとしよう。
望遠レンズの大きなフードはステッカーチューンすることにしているのだが、このレンズにはNRT仕様にしてみた。成田空港がベースということは決してないのだが、NRTステッカーに特別に描かれていた「うなりくん」がかわいかったので。