タイトルはやや偽りがあって、今の時点でこの先10年もずっと主力として使い続けるとは思っていない。しかし先日行われたニコンのファンミーティングで、企画開発の担当者の方は「Z 8は10年くらい現役で使い続けられるカメラを目指した」と言っていた。
なるほど! その心意気は大いに買いたいと思う。せっかく発売日に買ったことだし、このカメラは「10年使う」を目標として使っていくことにしよう。
カメラ以前に、10年後に自分自身がどうなってるか全く想像つかないのが一番の問題なのだが、それはさておくことにして😉
Nikon Z 8届く
5月10日の発表から5月26日の発売日まで2週間くらいしかなく、久々の大型新製品のわりに、なんだかとてもあっけなく手元にやってきた感があって、いろいろと心の準備が整っていない感じがするのだが、ともかくZ 8(以後機種名はスペースを省いて”Z8″などと表記する)の箱を開けてみよう。
ドキュメントの紙類を除くと同梱されていた物はこんな感じだ。本体とストラップ、専用充電池EN-EL15cと充電器MH-25a、それにUSB Type AtoCケーブル(いまどきA?)とケーブルホルダー(どうやって使うのかは知らない)だ。この中で使うのは本体と充電池だけで他は使わずに箱に戻しておいた。
ところでニコンもそろそろUSB PD対応の充電器を用意するべきではないだろうか? カメラ本体が充電器になるから別途用意しないという考え方であるなら、大きくて野暮ったいMH-25aは無駄なので、同梱品から外して少しでも安くして欲しい。
撮影者側から見た軍艦部(という言葉は今でも使われているのか?)はこんな感じだ。高機能かつ高性能なカメラだが意外なくらいにスッキリしている。何でもダイヤルを付ければ良いってものではないということか。
細部を見ながらセットアップをしていく
さて、メモリーカードと電池を入れて、事前に買ってあった液晶保護ガラスを貼り、ピークデザインのアンカーとプレートを取りつけて、細部を確認しつつ設定をしていこう。
まずはカードを入れる。Z8はCFexpress Type-BとSDXC UHC-IIのデュアルスロットだ。2ndスロットがSDXCカードスロットになったことについて賛否両論あるが、現時点では個人的にはどちらでも良いかと思っている。今後使っていく上でその意見は変わるかもしれない。
メインとなるCFexpressカードは事前に購入しておいたPROGRADEのGOLD 512GBを入れ、SDXCは以前からZ5などで使っていたCOBALT 128GBを入れた。CFexpressにRAWを、SDXCにはJPEGまたはHEIFを記録するように設定した。
RAWはロスレス圧縮RAWだけでなく、高効率RAW(★ありと無印の2種類がある)というものがZ9と同様にサポートされている。これはいわゆる非可逆圧縮RAWと思われ、ファイルサイズも小さくバッファやカード書込みへの負荷も少ないらしい。
なおデフォルトは「高効率RAW★」になっていたし、しばらくはいろいろ使ってみるとして、いずれ高効率RAW★を常用することになると思われる。
ところで現時点で感じているZ8の欠点のひとつは、このカードスロットの蓋ががZ5/Z6/Z7などと同様にロック機構がないタイプとなっていることだ。Z5のカードスロットの蓋はカメラバッグへの出し入れなど何かの弾みにパカッと開いていたりする。とてもイラッとするし、破損の危険性もあるし、運が悪ければカードを紛失するかもしれない。
実際のところZ8のカードスロットの蓋は、Z5ほどユルユルではないので大丈夫かもしれないが、今後注意していかなくてはならない部分だ。
そしてバッテリーEL-EN15cを入れる。グリップ部に底から入れる方式は良くあるタイプだ。
以前使っていたあるカメラは電池室の蓋のロックが甘くてすぐにパカッと開いてしまい難儀したことがある。なのでここも欲を言えばPENTAX K-1などのようにロック機構付きだと良いのだが、Z5でも勝手にバッテリー室が開いていたという経験はないので、こっちはそんなに心配していない。
なお、手に入れてから3日くらい使ってみたところなのだが、電池寿命に関してカタログスペックの数字(静止画で330枚前後)はほぼワースト値だと考えて良さそうだ。
初日こそいろいろメニューを弄りながら使っていたこともあり、静止画の単写を中心に約500枚、4K動画を数分撮影して電池の残りは20%ほどだった。翌日以降は無駄な操作が減ってきたので、同様の使い方をしても電池残量は40%以上残る感じだ。動体など連写を多用する場合は枚数的には一桁変わるだろう。
なので電池の持ちについては心配したほどひどくはないが、Z5と比較しても悪い方であることに代わりはない。丸1日使おうと思ったら予備バッテリーは最低1本持っておく必要がありそうだ。
ボディの右肩周りはとてもスッキリしている。肩液晶が要るか要らないか?論はあるのだが、あるとちょっと格好良いのは確かだ。この液晶は最近の流行で黒バックに白文字で表示され、電源OFF時も常にカードの状態と残り容量が表示されているので、持ち出す前のカード入れ忘れチェックに使える(なので電池残量も表示されてると良いのに)。
距離基準マークの横にある穴はスピーカーだ。Z9とは違ってここからシャッター音が鳴る。慣れてしまえば問題ないが手応えがないことと合わせて最初は戸惑う部分だ。
シャッター音の大きさはデフォルトの「中」のまま使っているが、屋外だとかなり控えめで撮影者にしか聞こえないだろう。はじめてシャッター切ったときは自分でもその音に気付かず、撮れたのかどうか良く分からなかったくらいだ。
リアルライブビューファインダーが特徴のZ9とZ8だが、連写を多用して動体を追いかけるとかいう用途でなければ、設定を変更してシャッターを切ったタイミングでわざとブラックアウトさせる(実際は真っ黒ではなくうっすらと映っている)ほうが使いやすいというのはその通りだと思った。
比較的大きくて重たいというZ8の欠点をいくらか取り返せる美点として、グリップがとても良いことがあげられる。発売前から各所のレビューでしきりに言われていたが「そんなの個人差だろ?」と思っていた。でも実際のところ確かにグリップ感は良い。自分には大きくて深すぎるのではないか?と心配していたがそんなことはない。
深いグリップにもかかわらず、マウント脇にある二つのファンクションボタンへのアクセスもとても良い。この点に関しては小さなZ5よりもよほど扱いやすいくらいだ。Fn1ボタンは凸型でFn2は凹型なっているのも細かい部分だが丁寧に作り込まれている。
なおZ8はZ9同様にボタン類のカスタマイズの幅が非常に広く、特にこのFn1/Fn2ボタンをはじめ、自分好みに機能を割り当てを最適化することが使いこなしの重要なポイントとなる。
今のところはFn1に「AFモード/AFエリアモード切替」を、Fn2は「FX/DX切り替え(ダイヤル操作不要のワンタッチ)」を設定してみた。さらに録画ボタン(静止画モード時)を「絞りプレビュー」に、サブセレクター中央には「AFエリアモード(オートエリア)+AF-ON」を設定した。あとはiメニューをどうするかいろいろ弄りながら悩んでいるところだ。
背面液晶にはさっそく保護ガラスも貼った。仕方なく買ったKenkoのKARITESという保護ガラスは、GRAMASよりも薄手でとても良い感じだ。見え方もタッチ操作も問題ない。あとは耐久性がどうだろうか? 肩液晶の保護フィルムは要らないと思っていたが、思ったより大きいし少し表面が出っ張っているのであった方が良さそうだ。
その他背面の操作系統に関しては、静止画/動画切り替えレバーが多少違うことと縦グリップ部がないことを除けば、基本的にZ9のそれを踏襲している。
と言っても自分はZ9を使ったことはないし、Z5とはかなり違いがある。特に重要な違いは再生ボタンの位置かもしれない。右手側ですべて操作できるようになっているのはありがたい。ボタンのカスタマイズも、基本的に右手側でできるだけ済ませる、ことを中心に考えていくと良さそうだ。
軍艦部の左手側。いわゆる四つ葉ボタン式だ。ただしZ9のようにドライブモード選択のダイヤルはなくて、ただボタンが並んでいる。いずれにしてもこの四つ葉ボタンはファインダー接眼部の形状とともに生粋のニコンユーサーにとっては重要なことらしいが、にわか出戻りニコンユーザーの自分にはよく分かっていない。
ただダイレクトな機能ボタンがたくさんあるのは良いことだと思う。ブラケット機能に専用ボタンが必要か?と言われると微妙だが、ドライブ、ホワイトバランス、モードの3つはとても便利だ。個人的な好みでは露出モードはダイヤルで選びたい(そういうカメラばかり使ってきたので)のだが、まぁ良いだろう。
もう一つZ8の特徴の中で自分にとって重要なことと言えば4軸チルト液晶だ。静止画ユーザーにとっては一つの理想形に近いものだと思う。横位置のローアングル方向と縦位置でグリップを上にしたローアングル方向は、液晶画面を真上に向けることが出来る。ただしそれぞれ逆方向のチルト角はかなり制限される。
PENTAX K-1のフレキシブルチルトと決定的に違う点は、特に縦位置の可動範囲の広さと、回転方向に捻れない(水平がズレない)ことだ。バリアングルの方が自由度は高いが、やはり少なくとも静止画向けにはチルトの方が使いやすいと思う。
Z8はメカシャッターがないのだが、センサーシールドが搭載されている。デフォルトではOFFなのだが真っ先にONに設定変更した。
するとレンズを外すとこのようにシールドが降りてキラキラした虹色のCMOSセンサーが見えなくなる。レンズ交換時のゴミ付着などを防げるわけでとても便利なのだが、これ自体がセンサーダストを巻き上げる原因にならないのか?ちょっと心配だ。
それを言うならメカシャッターも同じ(より悪い?)だし、レンズ交換時にセンサー面がむき出しになるよりはよほどマシなのは分かる。いずれにしてもこれはONで使用していこうと思う。
レンズをつけてみる
さて、続いて手持ちのレンズを取り付けてみよう。
まずは標準ズームのZ24-120mm f/4Sだ。バランスという意味ではこの組み合わせが最強ではないかと思う。なにも言うことがないくらい完璧だ。見た目だけでなく、実際この組み合わせなら大抵のものは撮れる気がしてくる。
26mmパンケーキと40mmを取り付けるとこんな感じだ。意外に悪くない。これらの組み合わせなら重量級のZ8も(比較的)小型軽量になる。Z8のイメージにはあまりない街角スナップなどこの組み合わせでやってみたい。
超広角ズーム14-30mmと、この前手に入れたばかりの超望遠ズーム100-400mmも取り付けてみた。使用頻度は低いかもしれないが、ここぞと言うところで威力を発揮するはずだ。
14-30mmはそれなりに長く使っているが、本当に満足度が高く、小型超広角ズームの決定版だと思う。そして新たに手に入れた100-400mm。ここ最近離れていた動体撮影にこれで復帰してみたいと思っている。
Z8と組み合わせて2.5kgほどでしかないこの組み合わせはそれこそこ小型軽量と言って良い部類だ。400mmというテレ端は超望遠の入り口に過ぎないが、Zの高画素とワンタッチのDXクロップを組み合わせれば、超望遠域でもそこそこ広い範囲をカバーできるのではないかと期待している。
最後にZ 5と並べてみた。思っていたほど違いはないように見えるかもしれないが、実物を並べて触ってみるとかなり違う。Z 5は本当に小型で軽いんだな、と思う。
なのでこのサイズ感のカメラもやはり捨てがたいような気がする。Z 6IIIとかZ 7IIIとかZ 5IIなどが出てきたらどうしよう……? と今からちょっと心配(期待?)している。
それで10年使えそうなのか?
ということで、タイトルの問いに対する答えは当然ながら現時点ではまだない。
しかしファーストインプレッションはとても良い。カメラとして過去最高額を支払ったのだから当然そういうバイアスはかかっているし、期待もしているのは事実だ。いずれにしろカメラとしてZ8の機能性能は素晴らしい。カタログスペックには現れないレスポンスなどもとても良くて、使っていて気持ちよい。
電池についてもそんなに心配していない。プラスチック系の新素材の外装もそんなに気にならない。画質については……もう少し色々撮ってみなくては分からないが、高画素はやはり正義だと思っている。
電子音が鳴るだけで何の手触りもないことで「撮ってる感がない」と感じるのも慣れるのではないかと思う。多くの機能を使ったり設定を煮詰めつつ、ファインダーを覗きシャッターを切る、という作業をしていると、例えメカ的な感触なかったとしても、十分に「写真を撮っている」という楽しさが味わえる。撮影結果を見ればなおさらそう思う。たしかに写真は撮れているのだ。
今のところ心配事は「重さ」だ。機能や性能にある程度慣れて、ある意味飽きてきた頃にこの「重さ」をどう感じるだろうか? そこの感じ方で10年使えるかどうかは決まるのではないかと思っている。
Nikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm), f5.6, 1/2000, ISO500
さて、すでに近所を中心にあちこち歩き回ってあれこれ写真を撮ってみたのだが、すでにかなり長くなってしまったので、作例的なものは別エントリーにしようと思う。