幻と消えたのはCP+2020だけではなく、PENTAXブランドの新製品だったのでは? と、2月末から失意の自粛生活を送ってきたペンタキシアンは多かったのではないかと思う。うっかり「時代はもうミラーレスだ。R5はいくらかな? Z8はいつ出るのかな? α9IIは本当に動体いけるのか?」などと考えながら他社のWEBサイトを開いてしまう。自分もそんな中の一人だった。
それが先の水曜日13日、しかも夜になってからいきなり「金曜日お昼にCP+で参考出品する予定だった製品について動画を公開するよ!」と、ペンタックスのTwitter公式アカウントがつぶやいた。
は?なにそれ? そうか、昨年9月に見たものや聞いたことは幻ではなかったのだ!と、正気に戻されることとなった。
そして予告通り2020年5月15日金曜日のお昼12:00に公開された動画がこれだ。39分12秒と、当初思っていたよりずいぶん長い。
高精細な商品イメージ画像がときどきインサートされるが、それよりも岩崎氏や若代氏が手にしている実物が気になる。4分割されたリモート会議風の低解像度、低ビットレートな画像にやきもきし、「見えない!全然見えないですけど! すみません、ちょっとそれこっちに貸してくれませんか?」と思わずiMacに手を伸ばしかけてしまう。
こんなに本気で食い入るようにYoutube動画を見たのは初めてかも知れない。
以下では、個人的な感想と期待をメモとして書き残しておく。
HD PENTAX D FA★85mmF1.4ED SDM AW
まずは、すでに開発発表がされていたこの中望遠単焦点レンズだ。興味はいったいいつ?いくら?ということくらいだろう。
動画のなかでは、とにかく画質へのこだわりが解説されていた。そのために3枚のスーパーEDレンズだけでなく、前玉に凹レンズを使うという変わったレンズ構成を採用しているとか。
DFA★シリーズとしては70-200mmと50mmに続く3本目のレンズとなる(動画内では4本目と言われていたが?)。50mmから約2年ぶりとなることもあって新レンズに飢えている身としては是非欲しいところだが、実のところあまり使い処が思い浮かばない。
中望遠は好きなのでとりあえず持っていれば良いかもしれないが、50mmのサイズと重量でもなかなか苦しいのに、更に大きく、重そうなこの85mmとなると「とりあえず持って行こう」という使い方は難しそうだ。だから、残念ながらこのレンズにはいらないかな〜というのが本音だ。
なおこのレンズは今年後半に発売とされているが、もうほとんど完成しているらしく、そう遠くないうちに発売されそうだ。実物を見てまた考えようと思う。
HD PENTAX-D FA 21mm Limited
この動画で一番のサプライズとなったのはこのレンズだ。これまでにまったく噂も出ていなかった。DFA広角単焦点レンズの予定はロードマップにあったが、それがまさかLimitedシリーズだなんて!
このレンズの謎はF値がまだ伏せられていることにある。まだ光学設計が定まっていないと言うことだろうか? 被写界深度目盛りはF4まで刻まれているので、F4より明るいことだけは確かだろう。
しかし前玉の小ささなどを見るとものすごく明るいとも思えない。F4なのか?F3.5くらいなのか? 動画中ではさらっとボケの話もしていたからもう少し明るいことを期待したい。F3.2とかF2.4とか中途半端な数字だとなお面白い。
外観デザインなどはFA Limitedをよく再現しているが、新世代のDFAレンズらしくAFはDCモーター駆動となり絞りリングは廃止された。言及はなかったと思うが当然電磁絞りのKAF4なのだろう。そして20-40mmで前例はあるのだが、LimitedシリーズなのにWR仕様でもある点はポイント高い。欲しい。
ということで、このレンズは出たら絶対に買うことになるだろう。発売は来年で、雰囲気的にはかなり先になりそうだ。
これをベースにDFA Limitedシリーズを是非拡張してもらいたい。
HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8
3本目はAPS-C用の標準ズームだ。実はちらほらと噂が出ていたレンズではある。
キャプションでは「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8(仮称)」となっているのだが、製品画像と試作品らしき実物には「HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW」とほぼフルの品名が刻まれている。
ポイントはAF駆動がDCでもSDMでもなくPLMと言うという点だ。新55-300mmなみの超高速AFが期待できる。というか、PLMのレンズは使ったことないので、どんな感じなのか知らないのだが。
外観デザインはやや不思議な感じだ。ズームリングは良いのだがピントリングは距離目盛りなしなのだろうか。スターレンズにしては素っ気なくて安物レンズみたいだ。
いずれにしろ光学系は新設計で、来たるべきAPS-Cフラッグシップに合わせて作られたレンズだ。しかしボディの発売には間に合わず、来年になってしまうとのこと。ただしDFA21mm Limitedよりは早くて来年前半の発売と思われる。
これは新APS-C一眼レフ機用の標準ズームとして是非手に入れなくてはならない。そうするとK-1改でDFA24-70mmF2.8がようやく不要になるのかも知れない。
いや、本当はDA★ではなくてDFA★24-70mmF2.8が欲しいと思っている。…K-1の後継機がもし仮にあるとすればその時に期待したい。
APS-Cフラッグシップ機
大トリはこれだ。これの話が一番聞きたかった。いったいどうなっているのか! 問い詰めたかったというのが本当のところだ。
機種名は相変わらず分からない。外観は昨年9月に目の前で見せてくれた試作機と大幅な違いはないように思えるが、ディテールはかなり詰められているようだ。
動画内で若代氏が力説したのは、光学ファインダーに力を入れているという点だった。過去のAPS-C機よりもファインダー倍率を上げ、1.05倍となるらしい。ってことはD500を超える。それは素晴らしい!
そのために接眼光学系なども見直し、接眼部が後ろに出っ張っているとか、アイセンサーを搭載し背面液晶をON/OFFするとかわりとディテールが解説されていた。
あと、やはりこれは動体撮影に対応できるハイスピード機であると言うことも再確認できた。コマ速、バッファ量、記録メディアのI/Fなどは分からない。あとAFまわりもポイント選択のスティックが付いていること以外まだ詳細には触れられていない。
背面液晶はやはり固定なのは確定的だろうと思う。今の時代、チルトくらいすれば良いのにとは思うが、ファインダーにこだわり抜いたという点と、動体対応機なのだというコンセプトを貫いているなら、やっぱり個人的には固定で仕方ないかなと思う。
開発状況については微妙に苦しい言い方に聞こえた。2020年内なのは間違いないと思われるが、COVID-19の影響はゼロではない的なエクスキューズもあったし、今年中の限りなく遅い時期になるのかも知れない、と覚悟しておこう。
でも、この際発売までこぎ着けてくれるなら遅れはもはや気にしないことにする。このデジカメ市場の状況のなか、完全新規設計の一眼レフカメラが新発売されるなんて、わりと奇跡的なことではないか? と思っている。
こういうのを待っていた
CP+2020が幻と終わった2月末、レンズロードマップすら更新しなかったリコーイメージングの態度についてグチグチと愚痴を書いた。
ここに書いた疑念はその後の2ヶ月半の間の動きと、今回の動画ですべて晴れたと思う。何だよ、こんなにネタが一杯あったのになんでもっと早く言わないの!?と改めて文句を言いたいくらいだ。もちろん、幻となったCP+2020が実際に開催されていたとしたら、本当はどういう展示と発表がされていたのかはもはや分からないのだが。
いずれにしろ動画の最後の方で、今後もSNS等を通じてアップデート情報を流していくという話がされていた。ぜひ、今後小出しにされる新情報に期待したいと思う。