写真用プリンターEPSON SC-PX1Vで紙の沼にはまりゆく

2020-11-18

 写真プリント用の高画質プリンターEPSON SC-PX1Vを買ってからいろいろプリントして遊んでいる。フレームを買ってきて家中に飾ってみたり、そこから溢れた写真はファイルにしてみたり。それは”ポートフォリオ”と言うにはおこがましくて、”アルバム”といった方が良いだろうか。

 とりあえず飾る目的はなくても、撮ってきたカットの中から2〜3枚選んでとにかく2LかA4くらいのサイズでプリントするようにしている。

プリント沼

 プリントの仕上がりはプリンターだけで決まるわけではない。プリント向けの現像術みたいなのもあるだろうし、どんな紙を使うかによって結果は大きく変わる。

 しばらくこの世界は見ていなかったから驚いたのだが、今は本当にたくさんの種類の写真用紙が売られている。一体どうしたら良いのだろうか?

Lightroom Classic CCからEPSON Print Layoutを経由して印刷する

 紙の話の前に、まず最初は現時点の印刷ワークフローについて簡単にまとめておく。と言っても至って簡単な話で、見出しに書いたとおり、AdobeのLightroom Classic CCからEPSON Print Layoutを呼び出して印刷するだけだ。

EPSON Print Layout

 EPSON Print LayoutはAdobe CCアプリケーションのプラグインとして動作するので、Lightroom Classic CCの「書き出し」から直接データを受け渡せる。中間ファイルを保存する必要がないので便利だ。もちろん単体アプリとしても動作する。

 UIは非常に分かりやすく、紙の種類とサイズと印刷品質を選択し、余白を設定し、最後はカラーマネージメントの方法を決めるだけだ。EPSON純正紙ならすでにプロファイルが用意されているので、紙の種類を選ぶだけで自動にしておけば適切なプロファイルが選ばれるが、サードパーティ製の紙の場合はそれぞれのICCプロファイルを選ぶことになる。

EPSON Print Layout for iPad

 なおEPSON Print LayoutはiPad OS/iOS版も用意されており(Andoroid用はない)PCレスでiPadからもほぼ同様のI/Fで直接印刷することも出来る。
 
 ということでここからが本題だ。以下にSC-PX1Vを手にしてからここまでに使ってみた紙についての感想を書き留めておく。

EPSON クリスピア

 純正の最高級品であり、厚手で真っ白な超光沢紙。EPSON製の写真用プリンターのチューニングはこの紙を基準に行われていると考えて間違いはないだろう。

 オーバーコートを有効にして超高精細で印刷するとA4を1枚印刷するのに15分近く印刷時間がかかるし、インクもかなり消費するようだ。しかしその分仕上がりは艶も精細感もコントラスト感も色の深みも素晴らしい。特に深いブルーの発色は綺麗で、新たに追加されたディープブルーインクはこの紙でこそ生きるのではないかと思う。

 ただ顔料インクの特性もあってプリント表面はうっすらと「塗り感」が感じられ、主にシャドー部の質感(光沢感)が失われる感じがするのがちょっと気になる。だから全体的に無地の紙を見たときのようなキラキラ感を期待すると、あれ?と肩透かしを食らう。この手の超光沢紙はやはり染料インク向きなのかも知れない。

クリスピアのプリント

 しかしさすがに純正紙のフラッグシップとあって、迷ったらとりあえずこれにプリントしてしまえば間違いないという感じだ。その上で何かが足りないと感じたら、別の紙を試すのが良いのだろう。

EPSON 写真用紙(光沢)

 クリスピアより1グレード下の純正光沢紙で、コストパフォーマンスに優れる。クリスピアと比べると光沢も白さもそこそこ劣るように見える。それでも一般的な基準では十分に白く光沢も強い。

 厚みは今回試した中では一番薄いが、印刷後しなしなになるほどではなく扱いやすい。晴天の日中に撮ったような、もともと明るくてカラフルな写真はもうこれで十分すぎるという感じだ。

EPSON光沢写真用紙のプリント

 特に記録や記念写真をL判で印刷するとか、2L判くらいで試し刷りする場合などはこの紙が良いと思う。もちろん飾る目的で大きく印刷しても十分映えるオールラウンダーだ。

EPSON Velvet Fine Art Paper

 EPSON純正の紙だが、これは一転してのールラウンダーな汎用写真用紙ではない。名前にあるとおり”ファインアート”用だ(ファインアートとはなんぞや?というのはさておき)。

 プロの写真家などがこの紙を推しているというイメージがあったので買ってみたのだが、すごく大ざっぱに言ってしまうと、クリスピアの対極にあるようなマットな質感でテクスチャもはっきりした紙だ。これは印刷する写真を選ぶだろう。

EPSON Velvet Fine Art Paperのプリント

 厚みのある紙なのに、印刷直後はわりとしなしなとして乾燥に時間がかかる。顔料インクでも相当にインクを吸い込むのだろうか? プリントするとよりマットな感じが強調され、シャドウ部がキリッと締まり不思議な感じになる。鮮やかさを求めるのではなく渋みを出すにはすごく良い紙だと思う。白黒も良いのかも。

 これは写真をモニターで見ていて、あるいはファインダーを覗いた時点ですでに、この紙にプリントした仕上がりをイメージできるようにならないと使いこなせないだろう。とりあえずなにかぴったりな一枚を探して過去データを漁っているところだ。

ピクトリコ プロ セミグロスペーパー

 世間でかなり人気の紙でいろいろなところでオススメされることが多い。純正の「EPSON写真用紙」互換とされているが、商品名に「セミグロス」と書いてあるとおり、光沢はそんなに強くない。しかし、地紙の色はクリスピアよりも白いと感じる。

 印刷前の紙自体にはテクスチャはあまり感じられないのに、印刷するとほんのりと目の細かい絹目調の落ち着いた質感が出てくる。そしてクリスピアとは逆に印刷するとむしろ光沢というか色艶が出てきて、精細感もコントラストも強い一方でとても上品で見やすいし、顔料インクの「塗り感」もない。

 純正紙は間違いないオールラウンダーだと書いたが、そういう意味ではこの紙も同じだ。コストもクリスピアとそれほど違わない。しかしここぞという1枚を出すなら、クリスピアかこの紙か迷った上、僅差でこっちを選ぶと思う。

ピクトリコ 月光 シルバーラベルプラス

 月光ブランドのバライタ調半光沢紙でかなり厚手の紙だ。基本的にはモノクロ写真のプリントにとても向いている紙とのことなのだが、もちろんカラーでも使える。

 地の色はやや黄色っぽく光沢も抑えられており、むしろマット感がある。粗めのテクスチャはランダムではなく紙の長手方向に筋を引いてるようだ。これもファインアート系の紙だと思うのだが、EPSONのVelvet Fine Art Paperよりは艶がある。

GEKKO シルバーラベルプラスのプリント

 実際モノクロを印刷してみると、他のどの紙よりも深みと質感が感じられてハイライトからシャドーまでとても綺麗だ。カラーで使うなら派手な色彩な写真より、落ち着いた色調の写真だったら合うのではないかと思う。

 銀残しとかと組み合わせるとどうなるだろうか? それよりも、この紙に自信を持ってプリントしたくなるようなモノクロ写真を撮ることが先決かもしれない。

CANSON バライタPHOTOGRAPHIQUE 310g/m2

 CANSONとはフランスの紙メーカーで、プリント用紙だけでなく絵画用の紙なども扱ってるそうだ。芸術の国フランス製となれば是非使ってみたいではないか。ということで、店頭でサンプルを見ながらあまり尖ってなさそうなやつを買ってみた。

 かなり厚手のバライタ紙で、純正の光沢紙などと比べると白くはない。それはもちろん悪いことではなくこの紙の性格だ。表面はスムースだが光沢感は抑えめでなかなか渋い感じの紙だ。さらに注意しないと裏と表が分からないのがすごい。まさか両面じゃないだろうし。

 ところで「バライタ紙」とはなんだろうか?ググるといろいろ出てくるが、銀塩写真の時代から聞く言葉だ。インクジェットの時代になっても同じような素材の紙が使われていると言うことなのだろうか?

CANSON バライタにプリント

 いずれにしろこれは使いこなしが難しい紙だと思う。だがその一方でどんな写真でも良い感じに仕上げてしまう懐の深さがある。もうちょっと経験値を積んでからまた試してみたい。

ピクトラン 局紙

 ビックリするほど黄色い。そして今回取り上げた中では一番厚い紙だ。プロの写真家が「これが一番好き」と言うのをいくつか見たことがあるので使ってみた。EPSON写真用紙(絹目調)と互換があると言うことで、紙の表面は細かいテクスチャがあるが同時に艶もある。そしてほんのりフィルムの現像あるいはプリント用の薬剤っぽい香りがする。

 やはり地の色がこれだけ黄色いと寒色系の写真よりは暖色系の写真に合うようだ。そして絹目調らしく反射が抑えられ少しマットな質感が出る。黒の締まりは良いのだが、シャドウ部はテクスチャの粒状感が目立ってしまう気がする。

局紙

 ちょっと使い方がイマイチ分かりにくい難しい紙という印象がある。少なくともこれもまたオールラウンダーではなく、使い処を選ぶことは間違いない。
 

まとめ

 さて、後付けになるがここまで貼ってきた「プリントの写真」は実際それぞれの紙にプリントしてみたものだが、単なるイメージに過ぎずそれで何かが分かると言うことはないだろう。「局紙はシャドウ部の粒々が目立つな」くらいは伝わっただろうか。

各プリント用紙の白さ

 しかしながら、無地の紙をこうして並べて見るとこれだけ白さが違うのだ。これに加えて光沢の度合いも違う。

 その辺を加味して、個人的な印象を4象限散布図的にしてみた。スケールと相対的な関係はあくまでも自分の印象なので、そうじゃないだろと言われるとそうかも知れない。あくまでも参考程度に見て欲しい。

 さらに紙の特性はこれだけでは語れない。さらには表面のテクスチャや質感などもあるし、厚みとか密度なども影響しそうだ。つまりプリント用紙は無限の沼だ。その無限の選択肢の中から、本当に最適な一枚を見つけるのは難しい。

 とりあえず、常用および気合いの一枚は純正のクリスピアかピクトリコのセミグロス、L版などは普通の光沢紙、オプションでマット系が良い場合はVelvet Fine Artと思っておくことにする。「是非この紙を使ってみたまえ!」というオススメがあれば、Twitterなどで教えて欲しい。

 そうして今後も少しずつ経験値を増やしていって、静かに「プリント用紙の沼」にはまっていくのだ。


 なお、SC-PX1Vは発売以来ずっと異常なまでの品薄が続いており一向に解消される感じがしない。A2ノビ対応のLのほうはまだ幾分マシなようだが、それでも入手難には変わりない。一体どうなっているのやら…。

2020-11-18|タグ: , ,
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