今年の夏も暑かった。
夏は毎年暑いものだし、連日の猛暑日なんていうのも急に始まったことではない。それでも少しずつ温暖化が進行しているの影響なのか、自分の体調が変化してきたせいなのか、今年の夏はとにかく外に出かける気力がでなかった。たまに覚悟を決めて出かけても、帰ってきてから半日くらい体調がすぐれずに寝込むようになり、この調子だとこの先もう夏に写真を撮るとか無理なんだな、と考えるようになってきた。それはそれで仕方ないかもしれない。もともと夏は嫌いな季節だし。
ということで、そんなやる気がない状態でもこの夏の間に少しずつ撮りためた写真があるので、ここにまとめてアップしておこうと思う。特にテーマもストーリーも何もない。2024年の夏はこんな感じだったという個人的な記録だ。
GR Space Tokyo
8月には原宿にGR Space Tokyoなるものがオープンした。
今になって売れに売れて入手困難となっているGRシリーズ。世界的にカメラのブランドとしてしっかりと確立し販売も好調とあれば、その中心地たる東京にこのくらいのショールームというかコミュニティスペース兼ギャラリーがあるのは当然のことだろう。
オープニングのイベントとして森山大道展がおこなわれており、大小様々なプリントや動画が流れていた。その象徴たる三沢の犬のオブジェも置かれている。このオブジェの写真はもうあちこちで見たのだが、結局現場に行くと自分でも撮ってしまうのも仕方ない。
訪れた日は天気の良い週末だったが、オープンからだいぶ時間が経過していたせいか、思っていたよりもずっと空いていた。なので、ソファに座ってゆっくりと青森県産リンゴジュースとアイスコーヒーを飲んでしまった。混んでいたら落ち着かないとは思うけれど、写真集もたくさん置いてあってゆっくりそれらを鑑賞することもできる。
実のところ、原宿という土地のイメージもあってあまり期待していなかったのだけど、思っていたよりもずっと居心地の良さそうなスペースだった。もちろんGRシリーズを実際に手に取って確かめることもできる。
スタッフの方に世間話的な感じでHDF版の販売状況と入手性について聞いてみたら、思いがけず「欲しいですか?」と聞き返され、反射的に「いや、欲しいわけではないです」とさらに食い気味に返してしまったのは失敗だったと反省している。
GR Space Tokyoを出てからしばし界隈を歩き回ってみた。土地勘がまったくなく何がどこにあるのか分からないまま適当に路地を歩き回るのは面白い。いかにもそれっぽいお店が並んでいたかと思うと急に住宅街になったり、見たことのある大通りに出たり。しばし街角スナップ撮影を愉しんできた。
東京には見知らぬ街角の風景が無尽蔵にあるということに改めて気付かされた。撮れた写真はなんでもないものばかりなのだが。
東京湾岸某所
場所はガラッと変わって東京の湾岸地帯。
晴れているのに空気は霞んでどんよりとした青空。この空気感が嫌いだ。フェンスがまた殺風景さを増している。なぜこんなところに来てしまったのか?と思わず思ってしまうが、この一帯はよく知っている地元なのだ。この殺風景さを撮ってみたらどうなるだろう?と思ってわざわざカメラを持ってやってきた。
ここは一応東京23区内の歴とした公道上なのだが、こうして車が不法投棄されている一帯がある。しかもボロボロの古い車というよりは、わりと新しい商用の軽バンが多い。いったいどういう状況なのだろうか?
不法投棄された車がずらっと並ぶ状況は物珍しくて写真を撮りまくってしまったが、ちょっと不審な人に見えたかもしれない。といっても、周辺にはほとんど人はいないのだが。だからこそこういう状況になっているわけで。でも思ったより良い写真は撮れなかった。なんというか、みたままの薄汚いものが薄汚く写っただけ。
でも撮影という行為を楽しめたからそれで良いと思っている。最近はこのブログも書かなくなり、結果にこだわる感覚が減って写真という趣味との距離感を調整しているところだ。良い方向に転べば良いのだが、やる気を失ったならそれはそれで仕方ないとも思っている。
頭上を飛んで行く飛行機。南風が吹く夏の間、都心上空を飛ぶ新ルートの時間帯以外は海沿いを旋回しながらB滑走路22に向かって飛行機が飛んでいく。その「ひねり」が見られるポイントでちょっと写真を撮ってみた。
しかし気温の高いこの時期、やはり昼間に望遠レンズで遠景を撮るのは厳しい。ここは最近密かに人気が出てきているポイントなのだが、ほかにカメラを構えた人は誰もいなかった。やはり夏は比較的撮りやすい旅客機であってもシーズンではないのだ。もっと空気が澄んで涼しくなるのを待とう。
夕焼け空
ただし夏は空の表情が豊かでその点は写真映えする季節ではある。
とある夏の日の午後、かなとこ雲っぽい巨大な積乱雲が湧いてきた。光と青空と雲のテクスチャが美しい。このサイズ感だと多分この雲本体はかなり遠くにあって、すぐに東京に雨が降りそうという状態ではない。なので安心してカメラを持ち出せる。
また別の日。9月に入って日が短くなるとともに空気が少し澄んできた気がする。日没近い時刻久しぶりにきれいな夕焼け空が広がり、都心で建設中のビルとクレーンのシルエットが印象的だった。
しかもそんな中を新ルートを通り羽田に向かってアプローチする飛行機が都心上空を飛んでいく。マニア的にはこのシルエットだけでA350だな……ということがFlightradar24を確認するまでもなく分かってしまう。エアラインまでは分からないのだが時間的に多分JALかSQあたりだろうか。
東京で本当の日没シーンが見られることは滅多にない。天候的にも視界的にも。これもまた厳密には地平線とは言えないのだが、都会らしいビル街の隙間をほぼ地平線スレスレまで沈んだ太陽のオレンジ色がグラデーションになるところまで見られるのは稀なことだ。
本当はこの太陽と飛行機のシルエットも1フレームに収めたかったのだが、600mmはさすがに長すぎたようだ。100-400mmだったらちょうど良かっただろうか。でも変にズームで画角調整できない潔さは面白い。超望遠域では特に割り切りが必要となるし、ちょっとしたフレーミングで写る絵のバランスがガラッと変わってしまうのも新鮮な体験だ。
ビールと寿司と肉
夏バテになるとすっかり食欲を失うが、おいしいものだったら食べられる。あとビールも。
今年の夏は久しぶりにビアガーデンに行った。東京の古き良き屋上ビアガーデンはほとんど絶滅しかかっているが、日本橋三越本店の屋上ではまだ夏季限定のビアガーデンが開催されている。この日は本当に暑くていくら夕方からとはいってもエアコンのない屋外で3時間も過ごせるのか?と心配したが、冷たいビールを一口飲んでしまえば暑さなんて忘れてしまった。ビールは美味い!
ただし、アルコールは液体ではあるが体力も水分も奪うので熱中症には十分注意が必要だ。チェイサーに水を飲みつつ、量もほどほどに。若い頃のようにがぶ飲みはもうできない。
新小岩の二代目 太郎にもお寿司を食べに行った。夏という季節は嫌いだが夏の旬の寿司は大好きだ。
特に新子を期待したのだが残念ながらなかった。大将曰く最近は新子が入るかどうかは本当に読めないらしい。あってもバカみたいな値段が付いていることも多いとか。ウン十万円出してくれるなら仕入れても良いけど、とか。いいえ、けっこうです。
この写真はコハダなのだが、状態としては限りなく新子に近いコハダだそうだ。そう言われて味わってみれば、新子の一枚付けに思えてくる。うん、そうだ!これは新子だ。
久しぶりに小岩のビリエットにも行った。相変わらずおいしい生ハムとパスタと肉料理とイタリアワインをいただく。今年は残念ながら台風の影響で「焼肉の日」の宴会のために神戸まで行くことが出来なかったので、その代わりと言うことではないが、肉料理の美味しさを十分に満足することができた。
その他
それ以外にあと3枚だけ追加しておく。
夏になると街角で良く見かけるようになるのがサルスベリ。東京の下町も例外ではなく、意外なくらいに草花から季節感を感じることができる。
サルスベリは繊細で華やかさもあってけっこうきれいなのだが、写真に撮るのは難しいと感じる。どこにピントを置いたらいいのか全く分からない。そもそも絞りを開けすぎなのだろう。そして寄りではなく木の姿全体を撮るべきなのだろう。また来年リベンジしようと思う。
キバナコスモスも真夏の暑い頃からずっと咲いている姿を見る。そしてこれは何度も書いてる気がするのだが、個人的にキバナコスモスはあまり好きではない。色合いもその姿も何というか大ざっぱすぎるというか何というか。
でもアゲハチョウにはそんなこと関係ない。キバナコスモスがワサッと咲いている公園の一角には、アゲハチョウをはじめ多くの虫たちが群がって賑やかだった。蝶がいるならカメラを向けざるを得ない。
夏空と東京スカイツリー。それこそモクモクとした積乱雲を期待したのだが、なかなかそういうシーンに出会うチャンスがなかった。でもこんな感じのぼんやりした眠たい感じの雲と青空は、むしろ酷暑の東京らしい色合いだと思う。そういう意味では東京スカイツリーらしい景色なのだろう。
10月に入ったというのにまだなかなか暑さが抜けきらないが、長期予報では今冬の気温は平年並みで太平洋側の各地で雪の量は多くなるという。キリッとした空気の澄んだ冬が待ち遠しい。どこまでも歩いて行けそうな季候になったら、またカメラを持って散歩に出かけたいと思う。都心の野鳥スポットにも行ってみたいし、空港へ飛行機を撮りに行こうとも考えている。