PENTAX K-3 Mark IIIが発売された。長かった。
開発発表とともにその存在が明かされてから1年7ヶ月、一眼レフの完全なる新モデルとしてはKP以来4年2ヶ月、K-3 IIから5年11ヶ月、K-3から7年5ヶ月… 特にこの1年はヤキモキすることが続き、諦めかけたこともあったが、そういうあれこれは良い思い出に転化して記憶の片隅に仕舞っておくことにしよう。
とにもかくにも2021年4月23日、最後の最後の約束はとうとう果たされ、PENTAX K-3 Mark IIIは我が手元にやってきた。運んできてくれたヤマト運輸のお兄さんに、いつもより丁寧にお礼を言っておいた。
シルバーとブラックの2色、しかも各1000台限定でバッテリーグリップと革ストラップがセットになったプレミアムキットまで用意され、どれを発注するか悩みながら、結局はシルバーのボディ単体を選んだ。
”プレミアム”の響きには大いにい惹かれたが、バッテリーグリップも革ストラップも使わないから(個人の事情)。
細部を眺める
さて、もうすでに事前情報でわりと細部まで仕様が判明しているPENTAX K-3 Mark IIIだが、改めて手元に届いた実物を眺めつつ、感慨にふけろうと思う。写真を撮るのはまた後だ。
燦然と輝く”PENTAX”と”K-3 III”のロゴ。ペンタ部は鋭く尖り、マウント前への張り出しが小さくなった。そしてこだわったというボディの厚みも実際薄く感じる。
トップカバーだけデザイン的に薄く見せておいて、段差を設けて液晶部が激しく出っ張っていて実際は分厚い野暮なカメラは世の中に非常に多い。しかしPENTAX K-3 Mark IIIは角が面取りしてあるだけで本当にこの厚みしかなく、とてもスマートで美しい。
もちろん一眼レフなので、マウント部は出っ張っている。むしろそっち側の段差が大きくなったような気がする。
ボディ部の薄型化はグリップの向上にも貢献しているようだ。ネットの口コミでも深く握っても指先が当たらないという評価が多い。グリップ自体は造形は多少違えど、そんなに従来機種と変わってるように見えないのだが、SRバッジのある谷間の彫り込みが非常に深くなっていることに、実物を手にして初めて気がついた。
でも絞り駆動用のモーター部はやっぱり出っ張ってる。彫り込みが深くなった分、むしろ出っ張りが増えた気がする。いや、別に気になったりはしていない。この部分からはいかにもK-3(そしてK-5,K-7)の流れを汲むカメラだな、と感じる。
基本的なところはKシリーズの伝統を抑えてあるとは言え、操作系もいろいろと変更されている。特にスマートファンクションの使いこなしが肝となる。まずは色々試してみなくてはならない。
肩液晶ももはや要らないような気もするが、デザイン的にも賑やかしであった方が良いだろう。しかし最近流行の黒地表示にもなるタイプの液晶ではなく昔ながらの感じだ。グリーンのバックライトは過去機種同様、設定でOFFにした(ついでに、音もすべて消した)。
AFポイント移動用のスティックがついたことも操作性の改善点として大きい。十字キーを切り替えるためのボタンも減って、むしろこの辺はスッキリした印象だ。そしてこのスティックの操作性がなかなか良い。レスポンスも良いので、ほぼ思った通りにAFポイントを動かせる。
36万画素のAEセンサーを利用したオートエリアAFもかなり良くなっているが、結局はセレクト1点またはセレクト拡大で、自分の意思でAFポイントを動かした方が、間違いがなく確実な気がする。
PENTAX K-3 Mark IIIで最も気合いが入ってるファインダー。アイピース部の出っ張り具合にもこだわり、そのために固定液晶にしたとまで言われている。まるでミラーレス機EVFのようにアイセンサーもついている。
ファインダーは前評判通り、そして3週間前にデモ機で体験したとおり、とても視野が広くクリアで見やすい。眼鏡とコンタクトを併用しているが、個人的な好みでアイカップは標準のまま使うことにしている。
カスタマイズ内容(暫定)
PENTAX K-3 Mark IIIはカスタマイズ可能なボタンが多いことも特徴だ。グリーンボタン、AFレバー、露出補正ボタン、ISOボタン、シャッターボタンを除くほとんどのボタンがカスタマイズできる。
いまはまだ暫定だが、現状の仮設定を備忘録として記録しておく(変更したボタンのみ)。
ボタン | 設定 |
---|---|
RAW | クロップ |
キーロック | 再生モード |
再生 | ワンタッチLV |
AEロック | 無線LAN |
これ以外のキーと十字キーはデフォルトのままだ。再生ボタンをどうするかがポイントだろうか。デフォルトの状態はちょっとあり得ない。
あともう一つ、スマートファンクションのEダイヤル含めたダイヤル設定のも、K-1 Mark IIなどと合わせるために以下のように変更した。
モード | 前ダイヤル | 後ダイヤル | Eダイヤル | グリーン |
---|---|---|---|---|
P | Adv Tv | Adv Av | 露出補正 | リセット | Av | 露出補正 | Av | ISO | 露出補正リセット |
Tv | Tv | 露出補正 | ISO | 露出補正リセット |
上記に加えてワンプッシュISOオートをONにした、これ以外のモードはあまり使わないのでまだ触っていない。今後ゆっくり詰めていこうと思う。
肝心のスマートファンクションはまだ内容は固まっていない。Eダイヤルで使うことが基本となるが、他のユーザーAFやその他いろいろ便利な使い方を考えていこうと思う。
レンズとか周辺アクセサリー
さて、4月23日前後には本体の他にPENTAX K-3 Mark IIIのために発注しておいたものが次々に届いた。
だいたいこんな感じだ。ボディ本体の他に、GRAMASの液晶保護ガラス DCG-PE04、そして新発売になったホットシューカバー O-HC177、さらにAPS-C用標準レンズとして、HD DA20-40mmF2.8-4 ED Limited DC WRを買い戻した。
これにピークデザインのDual Plateと手持ちで余っているブルーのアンカーを付ければ外に持ち出す準備は完了だ。
バッテリーはおなじみのD-LI90P(2020年7月製)がひとつついてきたが、K-3 Mark IIIは本体充電が出来るようになり、充電器は同梱されていない。が、すでにUSB PDF対応の充電器 D-BC177を持っているので、同梱されていた小さなACアダプターとUSBのA to Cケーブルは使用しない。
とりあえずレンズを取り付けてみた。うむ、やはりこのレンズと組み合わせた時の見た目は最高だ。
一瞬、レンズはブラック版にしようかとも思ったのだが、まー、ここはせっかくなのでシルバーを合わせた。黒いレンズは他にたくさん持ってるから。
以前、K-3時代にもこのレンズを持っていたのだが、その時はプチドレスアップとして、HD DA20-40mmの、ほとんど飾りとしか思えないフードをブラック版に交換していた。その時使っていたブラックのフードがまだ手元に残っていたので、今回も付け替えることにした。先っちょだけブラック仕様というのも、結構良いのではないかと思う。
GRAMASの保護ガラスも無事に貼ることが出来た。クリアで見やすく、手や鼻の脂も目立たず、拭き取りやすく、タッチパネル操作にも問題はない。保護ガラスはK-1時代からこれ一択だ。
なお、ガラスではなくただのフィルムだが、肩液晶用の保護フィルムもついている。特に必要はないがせっかくなので貼っておいた。
ホットシューカバーO-HC177はこんな感じだ。渋いガンメタでいかにもな派手さはない。小さなPENTAXロゴが背面を向いてるところがミソだと、K-3 Mark IIIの企画担当の若代氏に直々にお勧めされた。そうとなれば買わないわけにはいかない。
ピークデザインのアルカスイス対応のプレートと青いアンカーも取り付けて、使用準備は完了だ。ストラップは今回はK-3 Mark III用に新たには買い足さなかった、SLIDEが新旧合わせて3本あるからもう十分だろう。
フルサイズは要らなくなるのか?
作例写真なしかよ!というのもなんなので、届いたその日の夜に撮影した一枚を載せておく。とりあえず月を撮っておけば間違いはない。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f8.0, 1/250sec, ISO800, -0.7EV
うむ、当たり前のようにちゃんと撮れている。もちろんかなりトリミングしている。まだK-3 Mark IIIを正式にはサポートしていないLightroom ClassicでDNGファイルを現像した。空気の状態も良かったのかかなりシャープだ。ノイズや細かいクレータの再現性もISO800としてはなかなかではないかと思う。
まだK-3 Mark IIIを手にして数日も経っていないが、個人的にK-3 Mark IIIで一番気に入ってるところはシャッターフィールだ。連写をする必要はない。シングルモードで1枚シャッターを切るだけで、メカの機敏な動きがよく分かる。何しろブラックアウト時間が異常に少ない。なのに手にはほとんどショックは伝わってこない。シャッターボタンについても個人差はあると思うが、重すぎず軽すぎず、ストロークも長すぎず短すぎずちょうど良い。
これは写真を撮っていて本当に楽しいし気持ちいいだろうなと思う。リコーイメージングが、製品プロモーションで動体撮影についてはあまり多くを語らず、スナップなどに力点を置いてる理由も何となく理解できる気がする。
5年前にK-1が発売されたとき以来、フルサイズへの移行をずっと進めてきて、APS-Cに戻ることはないと思っていた。しかしK-3 Mark IIIの前にはそんな話はなかったことにするしかない。
こうなると考えてしまうのは、もはやK-1 Mark IIを持ち続ける理由はあるのだろうか? ということだ。もちろん、そんな比較する必要は全然ない。比較したって意味がない。が、やはりペンタキシアンとしてはそこを考えずにはいられないのだ。
その辺はじっくり今後考えていきたいと思う。