手にしてから2週間のNikon Z 8に振り回されながらいろいろ撮ってみた

2023-06-11

 Nikon Z 8を手に入れてからすでに2週間以上経っているが、その間暇さえあれば写真を撮りに出かけている。Z 8(以後機種名はスペースを省いて”Z8″などと表記する)とともに手に入れたNIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR Sで撮った写真についてはすでに一つエントリーをあげたが、それ以外のレンズも使ってみたので、今回はそれらをまとめておこうと思う。

Nikon Z 8 + NIKKOR Z14-30mm f/4 S

 まずは超広角ズームのNIKKOR Z14-30mm f/4 S。かなり小型のレンズだがZ8とのバランスも意外に悪くない。

黄色い花菖蒲Nikon Z 8, NIKKOR Z14-30mm f/4 S(14mm), f8.0, 1/320, ISO64
 小岩菖蒲園に咲いている黄色い花菖蒲。ローアングルから空を煽る超広角の定番構図だ。実はそこそこ風が吹いていてユラユラしているのだが、AF-Cでピントは問題なく普通に撮れてしまう。
 

木Nikon Z 8, NIKKOR Z14-30mm f/4 S(16mm), f11, 1/125, ISO64
 梅雨入りの時期なので仕方ないが、Z8が発売された5月末から天気が悪い日が多い。そんな中でもこの日は珍しくそこそこ晴れて青空も綺麗だった。小岩菖蒲園のある河川敷の木の下には、強い日差しを避けて多くの家族連れが集まっている。

 このレンズはZマウント黎明期のわりと早い段階で発売されたレンズだし、コンパクトさを売りにしているが、さすがSラインを名乗ってるだけあって、描写性能的にも隅々までまったく隙がない写りをする。
 

涼亭の中から庭園を眺めるNikon Z 8, NIKKOR Z14-30mm f/4 S(14mm), f5.6, 1/40, ISO64
 6月上旬、清澄庭園の涼亭で清澄茶屋が営業していた(普段はやっておらず不定期に営業することがある)。涼亭の座敷からの庭園の眺めは相変わらずとても良い。朝まで降っていた雨が上がったタイミングで出かけたのでとても空いており、見ての通り貸し切り状態だった。

 なので周囲の目を気にすることなく(と言っても店員さんの目はあったのだが)あちこち動き回り、レンズ交換をしながらあれこれ写真を撮ってしまった。いろいろやってみたがここはやはり広角がいい。

Nikon Z 8 + NIKKOR Z24-120mm f/4 S

 続いて標準ズームのZ 24-120mm f/4 Sを使ってみる。このレンズはもはやZマウントを代表する1本と言っても過言ではない超万能便利ズームだ。

PEUGEOT 308SW GTNikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(51mm), f8.0, 1/250, ISO64
 PEUGEOT 308SW GT。実は車体はドロドロに汚れていて雨垂れがついている。

 ここは我が家からもそう遠くない都内のとある場所なのだが、最近はバイクや車など愛車の写真を撮りに来る人が多い。それは景色が良くて映えるからと言うより(背景はただの草むらだし)、写真を撮りまくっていても誰の邪魔にもならないから、と理由で(多分)。あとこの周辺の道路は空いていて走っていて気持ちよい。

 Z8とレンズをたくさん積んでこの車でどこかに写真を撮りに出かけたいと思っている。
 

紫陽花Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(120mm), f5.0, 1/125, ISO110
 気がつけばもうすっかり紫陽花が最盛期を迎えている。最近は雨の日が多いのだが、タイミングが合わずまだちゃんと紫陽花を撮っていない。

 それにしてもこういう手持ちの近距離撮影はとても楽になった。何しろピントの心配をほとんどしなくなった。

 あと、電子シャッターは味気ないという一方で、やはり無振動という利点は大きい。Z8はボディがそれなりにがっしりしていて重量感もあるし、シャッターボタンのストロークと重さもちょうど良いので、思ったタイミングでシャッターが切れることもあり、ある意味「シャッターフィールが良い」という錯覚に陥る。
 

京成線江戸川鉄橋Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(120mm), f18, 1/60, ISO64
 特にこの京成線の電車を撮りたかったわけではないのだが、手ぶれ補正の特性とかファインダーの見え具合を体感してみたかったので、流し撮りの練習として撮ってみた。シャッター速度は1/60程度で、それほど速度も速くないなので難易度は低い。

 リアルライブビューファインダーはやはり動き物を撮るのに絶大な威力がある。フリーズもしないしブラックアウトもしないので、むしろレフ機よりも動いているものは追いやく、フレーミングが安定する。その結果打率も上がるはずだ。
 

Nikon Z 8 + NIKKOR Z26mm f/2.8

 次に今年の2月に発売されたばかりのパンケーキレンズ、Z26mm f/2.8を使ってみよう。

お地蔵さんNikon Z 8, NIKKOR Z26mm f/2.8, f4.0, 1/1000, ISO400
 とある街角にあるお地蔵さん。古くからあるもので、今でも地域の人たちによってきっちり手入れされている。でも、毛糸の頭巾は暑くないだろうか?

 なおここにはRAWから現像してsRGBで書き出したJPEGを貼ってあるが、もともと撮影時はRAW+HEIF(HLG)で撮ってみたものだ。HEIFはApple系のデバイスでは普通にサポートされているし、Lightroomでも開くことが出来る(表示環境についてはまた別の問題)。

 ハイライト側の階調をしっかり取り出すためだと思うが、HEIFに設定すると最低感度がISO400になる。結果シャドウ側は持ち上げることになるので、ノイズ的には不利なことになる。またピクチャーコントロールもSDR用のものは使えなくなるので、JPEGの上位互換的に気軽に撮って出しで使うものではないようだ。

 とは言えJPEGはあまりにも情報量が少なく、もう限界が来ており、今後何らかの形でHEIFなどの新フォーマットに移行するはずと思っているので、HEIFの使いどころについてはもう少しじっくり試してみたいと思う。
 

雨の東京駅リフレクションNikon Z 8, NIKKOR Z26mm f/2.8, f4.0, 1/30, ISO1800
 雨の日の東京駅丸の内口駅舎。駅前広場のタイルが雨に濡れると綺麗なリフレクションになるので有名な場所だ。この日は期待したようには雨が止まず、まるで鏡のようにツルツルな水たまりは出来なかったのだが、まぁまぁ良い感じに撮れたと満足している。
 

雨の東京駅リフレクションNikon Z 8, NIKKOR Z26mm f/2.8, f4.0, 1/30, ISO4500
 もう一枚は反対側から。傘を差しながらの短時間の撮影だったので、Z8には特に雨対策はしていない。Nikon機の防滴性能についてはいろいろな話があるが、それほど心配はしていない。多少の雨ならPENTAX機と同じように扱うつもりでいる。

 あと高感度性能については、最新世代のカメラとは言え高画素の積層センサーなので、あまり強くはない。と言うより、はっきり言ってしまえばPENTAX K-1 Mark IIのほうがRAWデータの素性としてはずっとクリーンで素直で扱いやすいと思う。単に慣れなのかもしれないが。

 Z8のRAWデータを見ていて思うのは「この感度でもこんなにザラザラなんだ?」と思うこともあれば、一方でISO6400程度の高感度でも「今まで見た中では一番クリーンに見える」と思う瞬間もあって、まだ特性をつかみ切れていない感じだ。

 最近は現像ソフトのNRがかなり強力になってきているので、最終的にはそれに頼ればいいと思っている。だからZ8ではあまり感度を気にせずAUTOに設定したまま(今のところ上限はISO12800に設定)、基本的にシャッター速度と絞りだけ気にするという使い方をしていこうと思っている。

Nikon Z 8 + NIKKOR Z40mm f/2

 Zマウントの撒き餌レンズのひとつ、Z40mm f/2ももちろん使ってみた。

 プラスチックマウントだし、開放や近距離で少しゆるめの描写を見せるなど、決して高性能なレンズではないのだが、Zマウントにはパキッとした優等生が多すぎるので、こういうレンズはかえって味わい深くてとても良い。
 
清澄茶屋の抹茶セットNikon Z 8, NIKKOR Z40mm f/2, f4.0, 1/30, ISO320
 清澄庭園の涼亭でいただいた金箔入りの抹茶と練り切りのセット。「清澄庭園にはバラはないのだけど……」と店員さんが申し訳なさそうに持ってきた練り切りはバラ仕様だった。いやいや、全然かまいません!

 抹茶とか飲み慣れていないのだが最高においしかった。甘い練り切りとの相性は抜群だ。予定外のカフェインを大量にとってしまったため、この日の夜は眠れなくなってしまったけど。
 

窓枠Nikon Z 8, NIKKOR Z40mm f/2, f5.6, 1/500, ISO64
 とある古い家屋の窓枠。

 このカットはクリエイティブ・ピクチャーコントロールの「グラファイト」の撮って出しで、RAW現像したものではない。そもそもこの時は設定をミスってRAWが記録されていなかったのだ。そういう基本的なところを間違える程度に、今はまだメニューや操作に慣れていない。

 現場でEVFを覗きながらピクコンを選んだのだが、結果それで良かったのだと思う。RAWに頼りすぎるのではなく、撮影時にさっさと仕上げを決めてしまうというのも悪くない(言い方!)。
 

街角の紫陽花Nikon Z 8, NIKKOR Z40mm f/2, f5.6, 1/500, ISO64
 鉢植えされていたり街路樹の根元に咲いていたりする街角の紫陽花も良い。

 Z8はいろいろな面で街角スナップ向きではないと思われている。実際その通りで間違いではないのだが、小型軽量な40mmをつけていると意外なくらい軽快にスナップ的な撮影も出来る。

 シングルドライブモードでシャッターを切るとスチャッ……っと小さな電子音が1回鳴るだけで、なんとも手応えがないのだが、それがかえって散歩や街歩きのペースを乱すことがない。シャッターを切る前後がずっと連続している感覚は、歩き回りながらのスナップ撮影をする上で新鮮な感覚だ。

 

 今回使った4本のレンズはZ5で使う前提で揃えてきたものだ。なのでこれらのレンズはZ8との相性がイマイチで、大三元とかF1.2シリーズが欲しくなったらどうしよう? と心配していたのだが、幸か不幸か今のところそういうことはない。むしろこの4本は、見た目だけでなく使い心地も含めてZ8にとても良く似合っている。
 
夕暮れの東京スカイツリーNikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(140mm), f8.0, 1/160, ISO320
 そしてNIKKOR Z100−400mm f/4.5-5.6 VR Sももちろんとても良い。Z8と組み合わせて動体だけでなく風景にも使いたくなる。

 このエントリーにはこの2週間使ってみたZ8のインプレッションをくどくど書こうかと思っていたのだが、フォトヨドバシに感じたことがすべて書いてあったので、それについては以下のリンクで代用したいと思う。

 この中で特に「……長年の作法みたいなものから脱却できるなと感じ入りました。」という一文に、今自分がZ8に対して感じていることが要約されていると思う。

 ここまで長年かけて自分なりに試行錯誤してきた「写真の撮り方」はガラッと変わってしまった、変えざるを得なくなったのだと実感している。それは多くの人がすでにα7シリーズに見いだしていた感覚なのかもしれない。頭が固くて鈍感な自分は、Z8でようやくそのことに気がついただけなのかもしれない。

 ともかく、今まで使ってきたカメラの延長線上で写真を撮ろうとしても、このカメラはいうことを聞いてくれない。今までの「作法」は全然通用しないのだ。というより、そんなことしなくてももっと違うやり方があるよ!とZ8が教えてくれている。現状はそういった「作法」の変化に頭も身体もついて行けず、設定をミスしたりして失敗を繰り返しているところだ。
 
Nikon Z 8 + NIKKOR Z24-120mm f/4 S

 しかしその変化を受け入れ、失敗を乗り越えた先には(とても陳腐な言葉だが)きっと「進歩」や「未来」があるだろうと感じている。

 それは勘違いでも幻でも良いのだ。そう感じると言うことが重要であり、アマチュア写真家にとっては、それこそがこの趣味の面白いところなのだと、何十年かぶりに思い出しているところだ。
 


 

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